幹細胞コスメの誤解
幹細胞コスメと聞くと、若返りするような何かすごいアンチエイジング効果のある成分なのではないか?と思う方も多いと思います。
幹細胞とは再生医療の現場で開発された画期的な万能細胞のことです。
本来、細胞培養技術ではその細胞からなる臓器を修復したり再生することしかできませんでしたが、京都大学の山中教授が考案した技術では体の一部の細胞から、体中どこの臓器でも作れてしまうという万能細胞「iPS細胞」を開発し、ノーベル賞を受賞しました。
つまり、心臓から採取した細胞で肝臓や胃を作ったりできるということです。
どこか適当な細胞を保存しておけば、体のどの部分でもスペアを作ることが可能なのです。
この細胞の再生技術をコスメに応用したものが幹細胞コスメなのです。
ただ、多くの人が誤解していること、それは幹細胞コスメに「幹細胞」が入っていると思っていることです。
しかし、実は幹細胞コスメには幹細胞自体が入っているわけではありません。
これは後でご説明する由来成分、「ヒト由来」でも「植物由来」でも同じことです。
お肌に塗るだけで細胞が再生?修復?
そんなわけない・・・
幹細胞は人間の皮膚に取り込んでしまうと、癌化しやすく酷いアレルギー反応も起きやすいという大変危険な副作用があります。
ですので、化粧品に使用される幹細胞培養液(幹細胞エキス)では細胞は取り除かれており幹細胞そのものが入っているわけではなく、幹細胞が作り出すEGFやFGF、コラーゲンやヒアルロン酸などの多くの成長因子が配合されているのです。
私たちが普段見ているお肌表面は約4週間前に肌の奥の基底層で作られた細胞が有棘層、顆粒層、淡明層となり角質層まで上がってきたものです。
少なくとも真皮細胞、または基底層まで届けば何らかの美容効果が期待できるとは言えそうですが化粧品成分が浸透するのはお肌の角質層までです。
それはお肌は外界からの刺激から体を守り、体内の水分を蒸発させないためバリアの役割を担っているからです。
もし、角質層よりも下層に浸透することができれば化粧品ではなく、医薬品になりますし、もし何らかの成分を浸透させるには、肌に傷や穴を開けないと不可能です。
つまり、化粧品である以上、化粧品の成分が真皮層までなんて浸透するはずがありません。
毛穴からであれば、真皮まで浸透できる?
毛穴は真皮からさらに皮下組織まで貫いていますので毛穴から真皮に浸透するという化粧品メーカーの方も稀におられます。
しかし、毛穴の内面は脂質でふさがれているので脂質を超えて真皮細胞に到達することはありえません。
少なくとも健康なお肌であれば「真皮細胞まで浸透することはない」といえます。
「化粧品」とは角質層に作用するものです。
薬機法で「角質層の保湿作用によって健康なお肌を維持する」というのが基礎化粧品の定義なのです。
角質層よりも下層に影響することは禁止され、化粧品の役割を大きく逸脱してしまいます。
つまり、基礎化粧品の美肌効果は「角質層での作用」であり、どの程度の保湿力、保水力があるかに限定されます。
結局、幹細胞コスメは効果あるの?
このように、幹細胞コスメに配合される「幹細胞エキス」には幹細胞そのものは入っておらず、あくまで幹細胞の「培養液」です。
幹細胞による再生医療のような細胞の修復や若返り効果は期待はできないことから、美肌効果はないのでは?と感じられるかもしれません。
また、幹細胞コスメには幹細胞が生成するEGFやFGF、コラーゲン、ヒアルロン酸などの成長因子が多く含まれており、この成長因子による細胞の増殖を促進する作用は実際に証明されています。
しかしこれは美容整形で行うヒアルロン酸注射などのような真皮層へ直接注入した場合の効果です。
幹細胞コスメは再生医療分野の幹細胞技術を応用していることに間違いありませんが、再生医療技術のように幹細胞そのものを利用して細胞を再生したり修復したりするものではありません。
あたかもこの再生医療の技術の幹細胞を使って、細胞を再生しているかのようなメーカーの広告を見ると、「効果なし」を言われても仕方ないかもしれません。
幹細胞コスメは「化粧品」である限り、肌表面の角質層にまでしか浸透、作用できないとすると、その効果はかなり限定的です。
前述のように、化粧品として販売されている限り、幹細胞培養液を使っていたとしても、影響は「角質層」までで、化粧品によるエイジングケアは、潤いを補充、または持続させることにより、将来的な肌老化を遅らせる目的、に限ります。
そうなると、一般的なスキンケア化粧品でよくある潤い効果以外の、細胞再生や活性する効果、ターンオーバーを整える、などといった幹細胞コスメ特有とされる効果はあまり期待できないことになります。
ただし、これは薬機法(旧「薬事法」)での話。
一般に化粧品は角質層までしか浸透、作用できないことが薬機法によって決められていますので、もし真皮まで浸透する化粧品があったとしても、「真皮まで浸透する」とは謳えません。
少し以前から、「ナノテク化粧品」という言葉がありますが、化粧品成分がナノサイズ化された粒子であれば、真皮まで浸透することは不可能ではないと思います。
以前、「肌がまだらに白くなる」という肌トラブルで自主回収したカネボウの美白化粧品からも分かるように、角質層までしか浸透しないのであれば、このような大きな肌トラブルは起きないでしょう。
つまり、角質層までしか浸透しないように作られている化粧品が真皮まで浸透してしまうと、肌トラブルとなるリスクが高くなります。
幹細胞コスメの安全性は?
前述した通り、幹細胞エキスには癌化の恐れのある幹細胞は入っていません。
幹細胞が作り出す副産物となる成分で細胞を活性化、美容効果を期待するというものですのでリスクはないように思います。
しかし、幹細胞エキスには「植物由来」、「動物由来」、「ヒト由来」の3種類があり、動物由来のものはその安全面に問題があるとされ、日本では流通していません。
最近話題になってきたヒト由来の幹細胞エキスは人間の皮下脂肪の細胞から抽出された幹細胞の培養の際の分泌液のことで、植物由来のものよりも、人間の細胞との親和性が高いためにお肌の再生能力が高いと期待されているものです。
しかし、ヒト由来の幹細胞コスメはプラセンタ(胎盤エキス)の問題もあり、安全性については問題視されてきました。
それは変異型クロイツフェルト・ヤコブ病などの感染の危険性があるため、ヒト由来のプラセンタ製剤を注射した人は日本赤十字社によって2006年10月から献血や臓器移植ができなくなったという前例があるためです。
ヒト由来の幹細胞コスメが一般に使われ出してから数年が経った現状、重大な肌トラブルの報告もありませんし、ヒト由来プラセンタの問題は注射の場合ですので、少なくとも、化粧品として肌に塗って利用されるヒト由来の幹細胞コスメに関しては安全性に問題はなさそうです。
ヒト由来の幹細胞コスメが植物由来よりも親和性に優れているので効果が高いとされる理由は、「細胞の活性化に不可欠なレセプターとリガンドの仕組みがヒト由来の幹細胞コスメにしかない」というものです。
しかし、前述のように、幹細胞コスメには幹細胞そのものが入っているのではなく、
幹細胞が生成するEGFやFGF、コラーゲン、ヒアルロン酸などの成長因子による細胞の増殖促進作用を期待するものですので、ヒト由来が特別効果が高いかどうかは分かりません。
オススメはヒト由来?
確かに今、「ヒト由来」の幹細胞コスメは、エイジング効果が高いと期待され、とても注目されてきています。
前述のように化粧品である以上、真皮層に作用できない幹細胞コスメですが、エイジング効果のポイントは成分の粒子サイズです。
今までも植物由来のリンゴ幹細胞コスメなども注目されたことがありましたが、ナノ粒子化の問題もあり、効果についてはそれほど話題になりませんでした。
最近ではナノ技術も進み、ヒト由来、植物由来、どちらの幹細胞コスメでも一定の効果が期待できるようになったといいます。
幹細胞コスメをが気になる、という方は、下のリンク先もご覧ください。
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